はじめに:なぜ今「イベントループ」を理解すべきなのか
プログラマーやSEとして開発に携わっていると、非同期処理や並行処理という言葉を避けて通れません。
JavaScript、Node.js、Python(asyncio)、GUIアプリケーションなど、多くの現代的なシステムの内部では「イベントループ」という仕組みが動いています。
しかし正直なところ、私自身もエンジニアとして駆け出しの頃は、
- 「イベントループ?なんとなく裏で回っているもの」
- 「非同期が速い理由はよく分からないけど使っている」
という理解で済ませていました。
ところが、ある本番障害をきっかけに、イベントループを理解していなかったことが致命的な設計ミスにつながった経験があります。
この記事では、そんな実体験を交えながら、
- イベントループとは何か
- どういう仕組みで動いているのか
- 実務でどう役立つのか
- さらに一歩進んだ応用的な使い方
までを、専門用語に偏りすぎず、できるだけ噛み砕いて解説していきます。
イベントループとは?一言で言うと何か
**イベントループとは、「発生した処理(イベント)を順番に監視し、実行し続ける仕組み」**です。
もう少し分かりやすく言うと、
「やるべき仕事があれば取り出して実行し、なければ待機する」
これを延々と繰り返す仕組み
がイベントループです。
イベントループは主に以下のような場面で使われます。
- ユーザー操作を待つGUIアプリ
- Webサーバーのリクエスト処理
- 非同期I/O(通信・ファイル操作)
- タイマー処理
イベントループを身近な例で考えてみる
イベントループは、飲食店の店員に例えると非常に理解しやすいです。
- 注文が来るまで待つ
- 注文が来たら料理を作る
- 作り終えたら次の注文を待つ
- これを繰り返す
この「注文が来たら対応する → 終わったら次へ」という流れが、まさにイベントループです。
重要なのは、一人の店員でも、順序よく対応すれば多くの客をさばけるという点です。
なぜイベントループが必要なのか
従来の同期処理では、
- 処理Aが終わるまで次に進めない
- 通信待ちやI/O待ちでCPUが暇になる
という無駄が多く発生していました。
イベントループを使うと、
- 待ち時間が発生する処理はいったん保留
- 別の処理を先に実行
- 完了したら結果を受け取る
という形で、CPUを効率よく使えるようになります。
イベントループと非同期処理の関係
イベントループは、非同期処理を成立させる土台です。
例えばJavaScriptでは、
- setTimeout
- Promise
- async / await
- fetch API
これらはすべて、イベントループの上で動作しています。
非同期処理は魔法ではなく、
- 処理を登録
- 完了したらイベントとしてキューに積む
- イベントループが順番に処理
という、非常に地道な仕組みで動いています。
【体験談】イベントループを理解せずに起きた本番障害
私がイベントループの重要性を痛感したのは、Node.jsでAPIサーバーを開発していた時でした。
ある日、本番環境で突然、
- レスポンスが極端に遅くなる
- CPU使用率は低いのに処理が詰まる
という問題が発生しました。
原因を調査した結果、イベントループをブロックする重い処理を、リクエスト処理の中で直接実行していたことが分かりました。
1件のリクエスト処理中に重い計算
→ イベントループが止まる
→ 他のリクエストが一切処理されない
イベントループは基本的に1本の処理の流れなので、
そこで重い処理をすると「全体が止まる」のです。
このとき初めて、
「イベントループを理解していない設計は、必ずどこかで破綻する」
と身をもって学びました。
イベントループを理解するメリット①:パフォーマンス改善
イベントループを理解すると、
- どの処理がブロッキングか
- 非同期にすべき処理は何か
- 分割すべき重い処理はどこか
が見えるようになります。
結果として、
- レスポンス改善
- 同時接続数の増加
- サーバーコスト削減
といった、ビジネスに直結する成果につながります。
イベントループを理解するメリット②:バグを未然に防げる
イベントループを意識すると、
- 「この処理はイベントループを止めないか?」
- 「awaitの位置は正しいか?」
- 「無限ループにならないか?」
といった視点でコードをチェックできるようになります。
これは、
動いてはいるが危険なコードを事前に察知できる力です。
イベントループを理解するメリット③:設計力が上がる
イベントループは、単なる技術知識ではありません。
- 処理の流れをどう設計するか
- 責務をどう分離するか
- 同期と非同期をどう使い分けるか
といった、設計思想そのものに影響します。
私自身、イベントループを意識するようになってから、
「とりあえず動くコード」ではなく、
「長く耐えられる構造」を考えるようになりました。
応用編①:イベントループを意識した設計のコツ
応用として特に重要なのは以下の点です。
- 重い計算はイベントループ外へ
- I/O待ちは非同期化
- 小さな処理に分割する
- 状態を持たせすぎない
これだけでも、設計の質は大きく向上します。
応用編②:イベントループの状態を監視する
実務では、
- イベントループの遅延
- キューの詰まり
- レイテンシ増加
を監視する仕組みを入れるとさらに安心です。
これにより、
- 障害の早期検知
- 原因特定の迅速化
- 再発防止
が可能になります。
まとめ:イベントループは「裏側」ではなく「主役」
イベントループは、
「知らなくても動くが、知らないと危険」な存在です。
- 非同期処理の本質
- パフォーマンスの限界
- 設計の良し悪し
これらはすべて、イベントループと深く結びついています。
私自身の失敗経験からも言えるのは、
イベントループを理解した瞬間、コードの見え方が変わるということです。
ぜひこの記事をきっかけに、
「非同期だから速い」ではなく、
「なぜ速いのか」を説明できるエンジニアを目指してみてください。
